パーソナルモビリティって何ですか?

担当:井原雄人(早稲田大学スマート社会技術融合研究機構)

行政
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パーソナルモビリティって何ですか?

天の声
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 グリーンスローモビリティや超小型モビリティとは違い、しっかりとした定義はありません。現状では、電動キックボードなどの1人乗りの電動の乗り物のことをいう場合が多いです。

パーソナルモビリティの範囲とこれまでの経緯

 パーソナルモビリティは、グリーンスローモビリティ(GSM)や超小型モビリティ違い明確に定められた定義はありません。そのためパーソナルモビリティという名称だけでなく、マイクロモビリティという名称で呼ばれることや、「****のようなもの」というように商品名をあげて曖昧に呼ばれることもあります。
 そこで、このトリセツでは「パーソナル=個人用」、「マイクロ=極めて小さい」という意味合いを生かし、1人乗りで客室がなく立ち席で乗る物を対象に、電動キックボードを代表例にして解説します。

 動力のないキックボードで、思い出されるのは2000年前後のJDRazorの流行かもしれません。初期のJDRazorは、片足を地面で蹴り走行して、後輪の泥除けを踏むことでブレーキとする人力の乗り物でした。このころの車輪は10㎝程度の比較的小さいもので、本格的な移動手段としてではなく、遊具の一つとして流行していました。
 その後、流行に乗って類似製品が販売される中で、より走行性を高めるために車輪を大型化したものや、動力を電動として速度を向上させたものが登場し、遊具の範疇に留まらないものとなっていきました。また、それらが歩道を走行した際に、歩行者との接触事故が多発するという結果となりました。
 これに対して、2002年に警察庁では「いわゆる電動キックボード及び電動スクーターについて」において、電動キックボードは原動機付自転車と同様であるという見解を示し、規制に乗り出した結果、電動キックボードは一時的に国内では姿を消すことになりました。

再注目される電動キックボード

 一方で規制の少ない海外では、新たなシェアリングモビリティとしての利用が広がりました。。これまでもあったシェアサイクルの取り組みに比べて、速度や移動範囲を広げることが可能となり、より多くの利用者を獲得しました。
 これらの動きは電動キックボードが、国内で再注目されるきっかけとなりました。しかし、原付と同様であるという位置づけは変わらないため、ミラーやウィンカーなどの原付に必要となる機器を取り付け、ナンバープレートの取得が必要となることは変わりません。また、原付ですので利用者は運転免許証を所持していなければならず、走行時にはヘルメットをする義務があり、もちろん走行は車道に限定されます。

 このように電動キックボードは、国内でもなんとか走行できるようになりましたが、海外のシェアリングモビリティの使い方とは異なるというのが現状です。それ以上に、ヘルメットをしているとはいえ、車輪の小さいにキックボードは安定性に欠け、乗用車と一緒に車道を走るのは危険を伴います。

 そこで、国内での普及を進めるために経済産業省では、2020年10月16日に産業競争力強化法に基づく事業者から申請された新事業活動計画を認定しました。これは新たな産業を育成するために既存の規制等が障害になる場合に、特別に規制緩和を行うことができる制度で、これにより認定した計画内で、電動キックボードによる普通自転車専用通行帯(自転車専用レーン)の走行を可能としました。
 この認定を受けたLuup社などの3社は、各社がシェアリングで提供する電動キックボードの普通自転車専用通行帯での実証試験を東京都(渋谷区、新宿区、千代田区、世田谷区)、千葉県(柏市)、神奈川県(藤沢市)、福岡県(福岡市)、兵庫県(神戸市)などの地域で実施しています。これにより、今後の普及促進するための電動キックボードの適切な規制を検討していくに当たっての判断材料の抽出を行っています。

今後の普及のために

 実証試験においては「シェアリングでの利用」「普通自転車専用通行帯での走行」というような限定的な条件となっています。また、原付が30㎞/hのがあるのに対して、この実証試験では20㎞/h以下とするなどの制限もあります。
 普及するための安全性の担保には、走行できる場所の限定や速度制限は必要となります。普及促進を考える際には、こういった安全性の視点での規制を考えるのと同時に、利用する側の視点での必要十分条件を考えることも必要です。

 普通自転車専用通行帯での走行は利用者にとって本当に十分でしょうか?実際は、他の自動車との接触の不安は解消せず、本当は歩道を走りたいかもしれません。しかし、今度は歩行者との接触の危険が高まり、20km/h以下という制限では不十分ではないか?ゆっくり走る自転車程度、例えば10km/h以下とする必要があるのではないか?ということになります。 
 逆に、自転車に比べて重量は重いですが、コンパクトに折りたためるというのは大きなメリットです。電車やバスへの車内持ち込みのルールをしっかり定めれば、既存の公共交通機関と組み合わせて、行った先での利用という可能性が広がります。

 このような検討を深めた結果、自ずと移動できる範囲は狭まっていき、バスやタクシーの代替としてではなく、いわゆるラストワンマイルを移動する手段としての利用が適切なのではないかと想像できます。利用者が想像する理想の使い方と安全性を担保した上で実際に可能な使い方の差を丁寧に考えていくことが必要です。
 このように、電動キックボードに代表されるパーソナルモビリティの普及には、GSMや超小型EVに比べて、もう一歩前の段階の「どのように使うのが適切か」という課題が残っているといえるかもしれません。パーソナルモビリティは、昨今のコロナウィルスの感染拡大防止に対応し、移動時の密を避ける手段の一つとしても注目されています。各地での実証試験の成果を基に、パーソナルモビリティが本当に適した領域を考えて行くことで、新たな移動手段の選択肢として並べられるようなることを期待しています。

参考文献

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