地域公共交通に対する赤字補填の意味は?

担当:土井 勉(一般社団法人グローカル交流推進機構)

行政・住民・議会など
行政・住民・議会など

赤字の地域公共交通を行政が支援する意味って何だろうか。 赤字は減らす方が良いと思うんだけど。

地域公共交通が運行の赤字以上に地域社会を支えているとすると、それは単なる「赤字補填」とは異なります。 赤字補填の意味を考えてみましょう。

地域公共交通の赤字の意味

地域公共交通の運行は、ビジネスとして収益を確保することで交通事業者によって担われてきました。しかし、現状では人口が集中する都市部を除いて収支が均衡する路線は減少しつつあります。収益が確保できない路線では、交通事業者の内部補助(黒字の路線の利益で赤字の路線の欠損を埋める)で運行するか、行政等からの補助金などを得て運行する状況となっています(地域の人たちが自治会費や広告宣伝費等を集めて収支改善を図る場合もあります)。

ここで地域公共交通の赤字の意味を考えてみましょう。この意味を考えるために、デパートのエレベーターを例にしたいと思います。エレベーターには設置費用や日々の運営経費がかかりますが、無料で運行されています。人々の移動を支えるため無料で運行されていることで、デパートにはお客さんが集まり、お店全体としては黒字になっているのです。地域公共交通も人々の移動を支えることで、まちの賑わいや高齢者の外出機会の創出、通学の支援、送迎の軽減などを実現している場合には、この運行を継続するために必要となる赤字への補填は「地域を支える支出」ということができると思います。

「赤字補填」ということで…

地域公共交通を支えるために投入される補助金などを「赤字補填」ということでいくつかの政策上のミスリードが生じる可能性があります。

①赤字補填ということで、廃線が最適に

赤字は良くないので、赤字補填する金額を減らすべきだという意見が出ることがあります。

赤字補填額を減らす方法は2つあります。一つは利用者を増やして収入増をめざす方法です。これは重要な方法なので、様々な工夫を重ねて収支を改善することが望まれます。これで黒字化が達成できるのであれば、民営化すれば良いことになります。そこまでの収支の改善が困難だから、行政が運行を継続するため補助金などで支援をしているのです。

もう一つの赤字補填額を減らす方法は運行費用を削減することです。運行費用を下げるということはサービス水準を下げることになります。すると利用者数も減少します。するとさらに赤字補填が必要となります。こうしたことを繰り返すと、赤字補填を削減する方法は廃線にすることが望ましいことになりそうです。これだと補助金を投入して地域公共交通を支えるという本来の目的とは真逆のことになります。

②赤字ということで、サービス改善が困難に

地域の人たちが利用しやすい地域公共交通を実現するためには、サービスの改善が不可欠です。サービス改善のためには投資が必要となりますが、赤字ということで、この投資を行うことに関する合意形成が困難になります。ボロボロのバス停でも赤字だから仕方がない、ということになります。これでは人々の移動を支える目的ではなく、地域公共交通の存在を残すことが目的になってしまいます。

③赤字補填の仕事だということで、担当職員の士気が低下します

地域公共交通を支えるという社会的に有意義な仕事であっても、事業者への赤字補填をしている業務だととらえると担当している職員の人たちの士気が低下して、意欲的に活動に取り組みにくくなる場合があります。担当職員の人たちが意欲的に仕事に取り組むことで、地域にふさわしい仕組みができるのです。士気の低下は地域の人たちにとっても残念なことになります。

つまり、地域公共交通への補助金などは「赤字」の補填ではなく、「地域を支えるための支出」なのです。「赤字補填」と言わないようにしませんか」。

■参考資料

・国土交通省近畿運輸局:「地域公共交通 赤字=廃止でいいの?」。CSEについて丁寧に解説されています。

http://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/cross_sector_leaflet.pdf

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