オンデマンド交通の導入の際に気をつけることは?

担当:福本雅之(合同会社おでかけカンパニー 代表社員)

オンデマンド交通の導入にあたって何に気をつければ良いのだろう?

オンデマンド交通の導入ありきでなく、特性をよく理解して導入の検討を進めることが大切です。

 「予約がなければ運行しないので経費が削減できる」と思ってオンデマンド交通を導入したにもかかわらず、あまり利用がされなかったり、期待したほどの経費削減効果が得られなかったどころか、逆に経費が増えてしまったりする例が見られます。こうした問題が起きるのは、オンデマンド交通の特性をよく理解しないまま、導入ありきで検討が進められてしまったためだと思われます。以下では、オンデマンド交通の導入を検討する際の留意点を述べます。

運行にかかる経費に関する留意点

走らなければ経費はかからない、訳ではない

 オンデマンド交通を導入する理由として、「空気を運んでいるバスをやめて、予約がなければ運行しないようにすることで経費を削減できる」という説明がされることがありますが、予約があったときに対応するためには、運転手を常に待機状態にしておく必要があり、人件費の大幅な削減は期待できない点に注意が必要です。もちろん、走らない分の燃料費は節約できますが、バスやタクシーの運行経費の6割以上は人件費が占めているため、経費削減効果は限定的です。

 地域によっては、空車タクシーを活用することで待機の経費を抑えている地域もありますが、このような方法が取れるのはタクシーの車両数が多いところに限られます。

予約受付体制にかかる費用

 オンデマンド交通は利用者が予約をしなければならないため、予約を受け付ける体制を整える必要があります。上記ドライバーの人件費に加えて予約受付要員の人件費も必要となることから、予約受付の人員が新たに必要となる場合には、経費が増大することもあります。一方で、利用者が少ないようであれば、タクシー事業者のタクシー無線やタクシー配車システムを活用することで配車にかかる経費を抑えることも可能です。

 予約受付の人件費を削減するために、予約配車システムを用いる例も見られますが、配車システムを導入するためには、初期導入費用、使用料、通信費が必要です。こうした費用がかかったとしても、予約受付要員が削減できるのであれば結果的に経費削減になることも考えられますが、そのためには利用者全員がスマートフォンで配車予約をするなど、電話予約をなくす必要があります。しかし、地方部の公共交通利用者の多くは高齢者であり、スマートフォンでの予約に馴染めない人も少なくないことから、電話予約を当面の間は併存させざるを得ません。こうなると電話予約を受け付ける人員を削減することはできず、配車システム導入の効果が帳消しになってしまいます。

 配車システムが必要なのは、予約が多いため人の力で配車計画を立てることが難しいような状況です。しかし、それほどまでに利用が多いのであれば、オンデマンド交通よりも定時定路線型のバスを走らせた方が効率的だと考えられます。利用者が少ないからオンデマンド交通を導入するような場合には、配車システムを導入しなくても人の力での配車が十分可能な場合がほとんどです。

事業者選定の留意点

地域公共交通会議による手続きが必要

 オンデマンド交通を乗合タクシーとして運行する場合には、道路運送法に基づく「一般乗合旅客自動車運送事業」のうちの「区域運行」の許可を得る必要があります。このためには、市町村が道路運送法に基づいて設置する「地域公共交通会議」において関係者間での協議を調えた上で、管轄の運輸支局に運行に関する申請を行う必要があります。このため、市町村が地域公共交通会議を設置していない場合には、新たに設置しなければなりません。

タクシー会社は乗合の許可を取らなければならない

 タクシー事業者が新たに乗合の許可を得て運行する場合には、従来のタクシー(乗用)事業だけでなく、新たに乗合(バス)事業に関する許認可手続きや人員の配置、輸送実績の報告などが求められることになり、事務的な負担は増大します。

 それなりの利用が見込まれるのであれば、こうした手間をかけることにも意義がありますが、最初から利用が少ないと見込まれる場合であれば、わざわざ乗合事業として実施するかどうかも再検討するほうが良いでしょう。

 オンデマンド交通以外の方法

 利用が少ないことが見込まれる中での移動手段確保策は、オンデマンド交通以外にも考えられます。オンデマンド交通を導入しても1便あたりの平均利用者数が1人程度となった場合には、タクシー事業(一般乗用旅客自動車運送事業)の枠組みの中でのサービスへの切り替えも検討に値します

 例えば、愛知県豊田市においては、利用が極端に少なかったコミュニティバスを廃止して、登録した住民であればタクシーを1回300円で利用できる仕組みを導入することで、利用者の利便性を高めながら、運行経費を大幅に下げることができました。

 参考になる資料

【オンデマンド交通の導入に際して注意する点のまとまった資料】

【一般タクシーを活用した外出手段確保の事例】

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