グリーンスローモビリティって何ですか?

担当:井原雄人(早稲田大学スマート社会技術融合研究機構)

行政
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グリーンスローモビリティって何ですか?

天の声
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時速20km未満で公道を走ることができる4人乗り以上の電動車両のことで、新しい輸送手段としての利用が期待されています。

グリーンスローモビリティの定義

 グリーンスローモビリティは、公道で走行可能な時速20㎞未満の電動車両のことで、相乗りをすることを前提に4人乗り以上であることが定義されています。逆に言うと定義はこれだけですので、これにあてはまる車両は以前から存在しており、電動ゴルフカートや低速電動バスという呼び方がされていました。これを2018年に、国土交通省が新たな呼び名としてグリーンスローモビリティと名付けました。グリーンスローモビリティという呼び名は少々長いので「グリスロ」や「GSM」と略されることもあります。

 この定義の他に、グリーンスローモビリティには5つの特徴があります。

  1. Green
    電動車両であるため、走行時にCO2を排出しません。また、太陽光や小水力発電などの地域で作られた再生可能エネルギーと組み合わせることで大きな効果を発揮します。
  2. Slow
    時速20㎞未満で走行するため、ゆっくり見て回ることが目的な観光利用などに最適ンです。
  3. Safety
    交通事故時の致死率は時速20km未満の時には0.4%となっており、速度制限により安全な運行ができます。
  4. Small
    一般的なタクシーやコミュニティバスより小型であるため、中山間地域や街中の狭隘な道での走行に適しています。
  5. Open
    窓のない車両であるため、車窓を眺めながら風を感じて乗車でき、乗車することの新たな愉しみを発見できます。
図1 グリーンスローモビリティの対象車両の例(国土交通省・環境省資料より)

グリーンスローモビリティの導入実績

 グリーンスローモビリティは国の導入促進施策もあり各地で導入が進み、全国で50か所を越える走行実績があります。また、海外ではマレーシアでの導入事例もあります。

 どの車両も緑ナンバーを取得することができるため、既存のタクシー(乗用)やバス(乗合、貸切)として使用することも可能ですし、自家用有償旅客運送の車両として公共交通空白地域の地域の足や福祉車両としての活用が期待されます。 タクシー事業としては広島県福山市(アサヒタクシー)の「潮待ちグリスロタクシー」やバス事業としては静岡県沼津市(伊豆箱根バス)の「沼津駅⇔沼津港線」などで乗車することができます。また、自家用有償旅客運送としては、島根県松江市(社会福祉法人みずうみ)の「電動カート(Re×hope)」などで実用化されています。

 また、国土交通省では「グリーンスローモビリティの活用検討に向けた実証調査支援事業」を実施しており、車両の無償貸与を受けてお試しの運行を行うことができます。グリーンスローモビリティはとても特徴的な車両であるため、地域の状況にマッチするか慎重に検討する必要があります。また、利用者やまちの人たちからすると今まで見たことがない車両ですので、こういった事業を活用して、「まずは知ってもらう」「試しに乗ってもらう」という取り組みから始めることが有効です。

グリーンスローモビリティの期待と課題

 グリーンスローモビリティの導入効果として期待されるのは、移動手段としてだけではありません。桐生市での導入事例では、グリーンスローモビリティを導入したことにより、「人と話す機会が増えた」や「笑顔が増えた」というような調査結果が得られています。 
 また、沼津市では「心が豊かになった」という回答が、移動が便利になったのと同等の評価がされています。
  このように、グリーンスローモビリティには移動手段としての価値だけでなく、移動を通じて利用者そのものに与える良い効果が期待されます。

図2 桐生市でのグリーンスローモビリティ乗車時のアンケートより
図3 沼津市でのグリーンスローモビリティ乗車時のアンケートより

 一方で、使い方によってはミスマッチになってしまうこともあります。分かりやすいところでは、速度が遅いため同じ定員の既存車両と比べて、1日あたりの輸送能力に劣ります。本来、公共今日交通にとって利用者が多いことは良いことですが、運びきれないのであれば、その場所にはグリーンスローモビリティは適していません。

 観光地での利用で「ゆっくり、見て回る」という目的には最適な車両でも、普段の生活の中で「移動手段として利用する」という方にとっては、ゆっくりというのは逆にデメリットになるかもしれません。

 輸送能力に劣るということは、1日あたりの運賃収入が少なくなるということであり、運賃収入だけで事業性を確保することは困難であるという課題もあります。これに対しては、メリットの大きい観光利用などで、ガイド料金などと組み合わせるのは有効な手段の一つです。

 グリーンスローモビリティは優れている点もありますが、万能ではないことを意識して、地域の状況や導入しようとしている路線の特徴を踏まえて検討することが重要です。

参考文献

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