現場調査って何を見たらいいのでしょうか?

担当者の皆さん
担当者の皆さん

現場調査って何を見たらいいのでしょうか?

博士!
博士!

バスや鉄道は地域の人たちの移動の足を支えるために現場を走っていますから、現場を知らないと適切な仕組みづくりはできません。

一般社団法人グローカル交流推進機構  土井 勉

現場を見ること・現場で聞くこと・感じることの重要性

例えば「焚き火」を考えてみましょう。焚き火の写真と説明文をみて、どんなものか理解できるでしょうか?焚き火の熱や煙、揺れる炎、香り、焚き火を取り巻く闇の様子など五感で感じることは現場でないと体感できません。

それと同様、地域の人たちの移動の仕組みづくりに取り組む際には、現場に行って土地の空気と地形と住まい方や働き方と人の流れを感じ取ることが大切です。

この感覚を持たないと地域の人たちとの会話などでも十分に意思疎通ができないかも知れません。

先ずは時間をつくって現場に行きましょう

日常の業務が盛りだくさんの行政職員の皆さんなども、是非、時間をつくって現場に行きましょう。「時間ができたら現場に行く」ということだと、いつまでたっても現場に行く時間が捻出できないかも知れません。先ずは時間を工夫して創り出しましょう。

現場を見るタイミングですが、平日と休日では人の動きが違うかも知れません。また、駅前などは朝の通勤通学の時間帯の送迎状況(ここはしっかり見たいですね)、昼間の買物など、夕刻の帰宅状況なども地域によって特徴があるかも知れません。同じ時間帯でも「上り・下り」でも異なる移動があることにも注意が必要です。雨天でも状況が違う可能性があります。自転車の使われ方にも注意が必要です。

現場を見るためのバイブルがあります。

宮本常一(みやもとつねいち,1907年-1981年)「民俗学の旅」(講談社学術文庫)がそれです。宮本は全国をくまなく歩いた偉大な民俗学者です。「民俗学の旅」はその代表作の一つです。この本の中に親から離れて山口県から大阪に向かう際に、父から教えられたことが記載されています。簡単に抜書きすると:

①汽車から窓の外をよく見て、田畑の様子、家の大小、屋根の様子を観察するとその土地の様子がわかる。

②駅では、人の乗降や、人々の服装にも注意すること。

③必ず高いところへ上がって、地形やまちの様子を見て、目をひいたものがあれば必ず行って見ることだ。

④お金があったら、その土地の名物や料理を食べること。その土地の暮らしがわかる。

⑤時間があったら、できるだけ歩いてみる。

ということが書かれています。現場調査のノウハウだけでなく現場へ行くことの意味を学ぶことができる名作です。是非、一読・再読されることをお薦め致します。

さて,私たちは現場でバス等に乗ったら何に注意すればいいのでしょうか

①どんな人達が乗っているのか。企業に通う人たちが多いのか、病院などに行く人が多いのか、商業施設に行く人が多いのか。乗客が入れ替わることがあるのか、終点で皆が降りるのか。

②ダイヤ通りに運行しているのか、渋滞に巻き込まれることがあるのか。

③車内の案内(バス停や料金)は適切か。

④沿線の住宅は古いものか新しいものか。

⑤人口密度は?

⑥各家庭のガレージの状況。1台の駐車か、複数台の駐車ができる家屋が多いのか。1台の駐車だけのスペースだけだと、家族の人たちの移動はクルマ以外の手段が必要になり、バスの需要を見込むことができそうです。

⑦道路の状況(道路幅員、勾配・高低差、自動車交通量)

 →道路の交通量を知る方法  自分の知っている道路の交通量1)を調べておくと、

  そこからの推測でおおよその交通量を推定することができます。

⑧バス停の様子(時刻表などはわかりやすいか、ベンチはあるか)

その他、大事なこと

・可能であれば、沿線を歩いて出会った人から話を聴きましょう。

・話を聴く方法として、土地のお店の方と小さなもので良いから購入して、お話をすることも良いですし、地場の散髪屋さんに入店して髪を切ってもらいつつ話を聴く2)など捨て身(笑)の方法もあります。

・現場に行ったら、忘れないようにメモを残すと、様々な機会に活きてきます。

・写真とトイレは可能なときに。後で…は後悔のもとです。

・集落に多くの家屋が在っても、もしかしたら空き家が多いのかも知れません(夜に行くと真っ暗なのでわかります)。

最後に注意

あまりうろうろしていると不審者に間違われるかも知れません。あくまでも爽やかに。
名札などがあれば、活用することも良いと思います。

1)国土交通省:全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)

2)神谷貴浩(中央コンサルタンツ株式会社)のお話

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