公共交通マップとはなんですか?

担当:谷田貝哲(バスマップ沖縄

行政担当者
行政担当者

公共交通マップとはなんですか?

天の声
天の声

地域で提供される公共交通サービスを、一枚の紙ないし一つのWebサイト等にまとめた案内ツールです。公共交通利用を促す効果があります。

「公共交通マップとは」

 日本では、鉄道は鉄道事業者が、バスはバス事業者が運営し、その上同じエリア内に複数の鉄道やバス事業者が共存していることも多い場合があります。どの事業者も自社サービスの案内はしていますが、住民の日常生活や観光客の観光行動においては、事業者に縛られず、様々な交通手段を利用するのが一般的です。ルートや乗り方など、あちこちで聞かなくてはいけないようではとても不便です。一目で、いろいろな交通サービスがわかるような案内があればいいですよね。
 公共交通マップは、地域で提供されている全ての公共交通サービスについてを、一枚の紙ないし一つのWebサイト等にまとめた案内ツールです。主に、公共交通の路線網を記載した地図、公共交通の運賃や乗り場・乗り方等の説明などのコンテンツで構成されています。

C:\Users\yatag\Dropbox\データ-サイト\paper_south2.gif

「公共交通マップはなぜ必要?」

 公共交通マップが必要な一番の理由は、「公共交通はわかりにくいから」です。

 目的地をカーナビなどで入力すれば、どこへでも行けるクルマとは異なり、公共交通を利用するには、「目的地最寄りの駅やバス停を探す」「運賃を確認する/払う」「降りる地点できちんと降りる」「時には乗り換えも必要」など、こなさなくてはいけないステップがたくさんあります。特に、線路がある鉄道と違い、バスは、バス停はあっても、そこを通るバスがどこに行くのかがわかりにくいものです。同じ行き先のバスでも経由する場所が違うことも良くあります。乗り方も、「前のり」「後のり」の2種類がありますし、運賃の支払い方も「前払い」「後払い」があります。

 地域に根差した公共交通サービスであればあるほど、ローカルルールのようなサービスも多く、よその地域から来る人や、普段あまり公共交通を利用しない人に対して利用を躊躇させてしまいます。

 そもそも、東京の「日暮里」、大阪の「放出」だって、他所の人には「ひぐれざと」(正解は「にっぽり」)「ほうしゅつ」(正解は「はなてん」)です。日暮里に行きたい人が、検索サイトで「ひぐれざと」と入力しても、永遠に辿り着かない。「わかりにくさ」をわかりやすく翻訳・解説してくれる「公共交通マップ」が必要なのです。

 公共交通マップによって、地域の公共交通サービスを「見える化」できることも、大きな理由の一つです。

 グーグルマップや、ナビタイムのようなアプリは、ある区間の移動方法の問いに対し、最適な解を返してはくれますが、それだけです。「すぐそばにバス停があるけど、そこを通るバスは1時間後か。ならもう少し時間をつぶして、そのバスで帰ろう」「あ、いつも見かける〇〇番のバスは、たまに行くお気に入りの飲み屋の近くを通ってるんだな。今度このバスで行ってみよう」ということはまずありません。

 地域の交通ネットワークを俯瞰的に眺められる公共交通マップは、「公共交通でお出かけできる」ことに気づくきっかけとしての役割も果たしてくれるのです。

「公共交通マップの有用性」

 公共交通マップは、「あればわかりやすいよね(僕は使わないけど)」程度の存在ではなく、実際に人々の公共交通利用を促す効果があります。

「バスマップ沖縄」が実施したアンケートによると、

  • バスマップを入手した人に、「普段ならクルマで行っている場所に、バスで行ってみたことはあったか」を尋ねたところ、回答者の半数が「あった」と答えました。
  • そのうちの6割は、「バスが「案外」便利だった」と答えました。
  • 回答者の1/4が、日常的なバスの利用頻度が「増えた」と答えました。

 バスマップを数か所の窓口で配布しただけの取り組みにも関わらず、バスマップがバスを使う「きっかけ」としての役割を果たしていることがわかりました。

 公共交通の利用促進には、いろいろな手法がありますが、公共交通マップの作成は、現状を「見える化」できるという点でも、その根幹となる取り組みでもあります。

 次回の記事では、紙の公共交通マップの作り方について解説をいたします。

「参考文献」

バスマップ沖縄:筆者が制作している公共交通マップです。「バスマップ沖縄」を念頭に置きながら本文を執筆しましたので、拙文をお読みいただくだけよりも、深くご理解いただけると思います。

バスマップ沖縄
沖縄の路線バス案内.バスマップ,時刻表,運賃を掲載.紙のバスマップも作成,配布しています.

バスマップの底力:全国で公共交通マップ(バスマップ)を作る市民団体や学識者がまとめた入門書です。絶版ですが、古本での流通があります。

バスマップの底力: 市民がはじめた楽しい交通まちづくり 作ろう・使おう・育てよう!
Amazon.co.jp: バスマップの底力: 市民がはじめた楽しい交通まちづくり 作ろう・使おう・育てよう! : 全国バスマップサミット実行委員会: 本

タイトルとURLをコピーしました