地域の移動ニーズの把握の際に気をつけることは?

移動の仕組みをつくりたい人
移動の仕組みをつくりたい人

移動に困っている人達を把握する際にどんなことに気をつけるといいのでしょうか?

トリセツ人<br>
トリセツ人

よく利用されているアンケート調査など、様々なニーズ把握の方法がありますが、いくつか気を付けたほうがよいことがあります。こうしたことも移動の仕組みづくりを適切に進めるためには大切なことなのです。

 土井 勉(一般社団法人 グローカル交流推進機構)

 このテーマはこれまでも塩士圭介さんが「住民の公共交通ニーズはどのように調査しますか?」 で記事を書かれています。また井原雄人先生も「地域で移動手段を考えるときにどのような人の声を聞くのが大切ですか?」(仮)で記事を書かれる予定です。
 こうした記事と、今回の記事は重なる部分が多くありますが、視点が少しずつ異なるところがあるので、読者の皆様はそれぞれの内容を見ながら、ニーズ把握についての理解を深めていただければと思います。

 地域の移動ニーズを把握するための「方法」と「内容」

 移動ニーズを把握するための「方法」は:

 ①アンケート調査

 ②ワークショップ(WS)

 ③関係者へのヒアリングやグループインタビュー

 ④個々の人たち(戸別訪問)へのヒアリング

などが一般的なものだと思います。

 こうした方法を用いて、対象とする地域の人々の移動に関する「内容」(現状や問題)を把握することになります。

 移動ニーズを把握する「内容」については、

・日常的な交通行動(外出の目的、利用手段・送迎の有無、行き先、頻度、時間帯など)

・現在の利用交通手段に対する評価(無かった場合の対応)など

・困りごとの相談相手

・個人属性

 などがあります。こうした「内容」については、塩士さんが既に記事を書かれています(塩士圭介;「アンケート調査の実施はどのようにすればよいですか?」)。

 ここでは移動ニーズを把握する「方法」で気をつけたいことについて書いていきたいと思います。

 移動ニーズを把握するための「方法」で気をつけたいこと

 上記の4つの方法の概要については、特に説明は不要だと思います。

ここでは、これらの方法を用いて移動ニーズを把握するために活用する際に注意すること、あるいは気に留めておいた方がいいことを書きたいと思います。

 アンケート調査で気をつけること

 アンケートは設問をすれば回答を得ることができるし、設問をしない項目について回答を得ることができません。したがって設問の設計については、先行事例などを参考しながら、調査の目的を踏まえたものをしっかりと考えることが必要です。

 また、被験者の人たちに負担をかけると回答の途中でストップすることがあるので、設問の配置の工夫や、設問数は可能な限り少なくする工夫が必要となります。

 アンケートの調査票の配布を世帯単位で行う場合には、世帯主だけでなく家族の人たちも回答できる様に複数枚の調査票を届ける配慮が必要となります。

 記載した調査票を回収する際に、ご近所の方に中を見られることを避ける人もいるので、密封した封筒による回収や、費用がかかりますが郵送などの方法も検討することになります。

 ただ、高齢者で単身世帯の場合など、そもそも調査票に回答することが困難な方もいると思います。あるいは家族が代筆されることもありますが、代筆者の意見が反映されることもある点には注意が必要です。

 そもそも、自家用有償運送などの規模が小さな需要・移動ニーズを把握する場合には、アンケート調査ではなく、対象者から直接聞き取るヒアリングなどを実施する方が適切な場合もあります。顔の見える関係を活かすことで、これからの利用者の掘り起こしやドライバーさんのリクルートができる場合もありそうです。

 ワークショップ(WS)で気をつけること

 WSを行うことで、どんな成果を得ることを目的としているのかを明確にする必要があります。そしてその目的を達成するために、必要となる開催回数や参加者の想定、準備する資料などが変わってきます。

 地域主体のWSを開催すると、自治会長さんなど地域の代表者の方々に参加を依頼することがあります。こうした方々も地域にとっては重要なのですが、普段は自動車を使って移動している場合が多いことがあります。そうすると、その人達が実際に移動で困っている人たちの実情を熟知されているかどうかが気になります。なんとなく状況はわかっておられるのですが、実際の状況については、あまりよくわかっていない場合もあります。

 地域の代表者が集まって意見交換をしても、移動で困っている人達の現状を知らない人たち多いと、残念ながら移動を支えるための計画情報としては不十分だということになります。

 WSで移動ニーズを把握する場合は、地域で移動を支える活動仕事などを実際にされている方々、移動でお困りの状況などをよくご存知の民生委員、保健師、PTAや女性会などの人たちの参加や、実際に移動に困っている当事者の皆さん人たちの参加が望まれます。こうした人達が参加されることにより「役者が揃った」状況になります。役者が揃うことで、より現場に近い実際のニーズを発掘することが可能となります。

 役者が揃った状態で、意見を出し合い移動困難な人々のお住まいを地図上にプロットしていくと、移動の仕組みの規模やルートなどの検討ができる可能性があります。

 また、WS開催の目的をニーズの掘り起こしだけでなく、移動の仕組みについての路線などサービス内容を参加者と検討することや、利用促進の方策についての意見交換を行う場にすることもできるようになります。

 関係者へのヒアリングやグループインタビューで気をつけること

 地域の人たちの移動ニーズを把握するために、交通政策担当者が移動にお困りの状況などを把握されている民生委員、保健師、PTAや女性会などの人たちに個別のヒアリングを行うことは、移動ニーズを把握するために外せないプロセスだと思います。また、こうした人々に一堂に集まってもらって意見交換(グループインタビュー)を行うことは、重要なことですが、これまでは行政の縦割りの壁があることなどの理由で意外に実施されていないようです。

 交通政策担当者は、こうした部門で活動をされている人々とも、日常的に意見交換など交流をすることで、移動ニーズの把握などについても円滑に取り組むことができると考えられます。

 また、移動ニーズの把握を行うための「5. 個々の人たち(戸別訪問)へのヒアリング」対象者なども、こうした分野の人たちからの情報は重要なものとなると考えられます。

 個々の人たち(戸別訪問)へのヒアリングで気をつけること

 実際に移動にお困りだと想定される人たちとの面談ですから、生の声を聞くことができる機会になります。

 ただ、ここで誰が聞き役になるのかで、回答が異なる可能性があります。信頼ができる人が聞かないと、遠慮や警戒感が生まれるがあるので「特に困ったことはない」という回答になる場合があります。  

 そこで、地域の方々から信頼を得ている人たち(自治会やまちづくり協議会、NPO、民生委員、保健師、PTAなどの人たち)や前の項目で記載した人々の協力を仰ぐことが期待されます。

 また、いきなりストレートに「移動で困っていることはありませんないか?」というような質問では、本音を聞かせてもらうことは難しいと考えられます。地域での生活などから徐々に移動の仕組みづくりに関する話題にシフトしていくことが望ましいと考えられます。時間と手間がかかる方法ですが、しっかりと現状を把握することができる方法になります。

 さらに、公共交通についての利用促進についても、こうした戸別訪問はモビリティ・マネジメントの取り組みとしても重要な方法になります。

 まとめ

 以上、簡単に移動ニーズを把握するときに気をつける事柄について記載しました。

 ニーズ把握の方法としては、他にもネットを使ったアンケート調査など、新たな方法も出てきました。どのような人々に対して、何を調べたいのか、という目的を明確にして、実際のニーズの把握の方法を定め、設問内容や把握したニーズの集計など可視化の方法を決めていくことが重要になります。

 なお、個人情報の取扱については十分に注意をすることと、調査対象の人たちに対して敬意を持って接することは極めて重要なことです。蛇足かも知れませんが、追記しておきます。

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