地域で移動手段を提供するときに行う必要のある活動はなんですか?

担当:福本雅之(合同会社萬創社)

地域で移動の取り組みを行おうと思うけど、具体的に何をすれば良いのだろう?

大きく分けて、「組織の運営」「サービスの運行」の2つの活動があります

 地域で移動の取り組みを行う場合、行わなければならない活動として真っ先に思いつくのは、車を運転するドライバーであることが多いと思います。

 しかし、継続的に移動サービスを提供し続けるにはドライバーが集まるだけでは不十分です。地域の利用ニーズを把握したり、運転資金をやりくりしたり、利用促進の取り組みをしたり、といった事務局機能が必要です。

活動を運営と運行に分解する

 地域で移動の取り組みを行う際に必要と考えられる活動を表にまとめてみました。ここでは、移動手段の確保の取り組みに必要な活動を「運営」と「運行」の2つに分解して考えてみましょう。

地域で移動の取り組みを行う際に必要な活動とその内容

運営に関わる活動

 運営とは、どのようなサービスを行うのかを考えたり、ドライバーの管理を行ったり、運転資金をやりくりしたり、行政に必要な手続きを行ったりという、企業で言えば企画や管理部門にあたる活動を行うことです。

 これらのうち特に大切なのは、1)運営や運行を担う人材の確保、2)利用促進のために、チラシの配布やイベントの実施といった広報活動、3)停留所の設置などへの協力依頼、4)寄付や協賛金などの資金の確保といった、地域に自分たちの取り組みを理解してもらい、さまざまな形で協力を得るための活動です。

 具体的なサービスを考える際には、地域の移動ニーズの把握も必要です。漠然とした「移動が不便だからなんとかしたい」という思いだけでは、必要な人々へのサービスが提供できないなどのミスマッチがおこり、うまくいきません。具体的にどういう移動に困っている人がどのくらいいて、そのうち何をターゲットに活動を行うのかを考えてサービスを組み立てる必要があります。

 また、移動手段の確保に取り組む際には、さまざまな法令上の規制をクリアする必要がありますから、運営組織の体制の整備や利害関係者との折衝、関係行政機関への手続きなどを行うことが必要です。具体的な例を挙げると、運営組織が法人格を取得する場合には、法人設立登記や役員の選任が必要になります。サービスの実施に向けては、車両の確保、保険の契約、停留所を設ける場合は行政や地権者への手続き、必要な資金の確保が必要です。

運行に関わる活動

 運行とは、実際のサービスを提供する、つまり運転業務が主なものです。この場合、二種免許を取得していることが望ましいですが、自家用車を用いる自家用有償旅客運送の場合には、国土交通大臣認定の運転者講習を受けることでドライバーを担うことも可能です。

 ドライバーの確保以外に必要となるのが「運行管理」です。運行管理とは、ドライバーの点呼を行って健康状態を確認して安全運行を確保することや、運行中にトラブルが起きた場合、ドライバーに対応の指示を出すことなどを行います。

 同様に、車両の安全性を担保するために「車両整備管理」も必要となります。

 運行管理や車両整備管理を行うためには、運行管理者や車両整備士の資格が必要な場合もありますから注意しましょう。

 以上の他に、デマンド交通等の予約型サービスの場合には、予約受付や配車を担うオペレーターが必要となります。

自分たちでどこまでやるかを考えよう

 運営に関わる活動についても、運行に関わる活動についても専門的な知識が必要であったり、行政機関への手続きが必要であったりと、住民だけで行うのはハードルが高いものです。そうした場合には、市町村行政や交通事業者などに相談をして、力を借りることが有益です。

 特に、運行に関わる活動については、利用者の命を預かるという観点から、さまざまな規制が存在しています。このため、ドライバーや、運行管理、車両整備管理などには、資格や講習の受講が必要なことが多く、住民だけで担うことが難しい場合があります。ある程度の費用が必要とはなりますが、運行に関わる活動の全部もしくは一部をプロであるバス・タクシー事業者に委託をすることも考えましょう。

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