【コラム】地産地消と公共交通って関係があるの?

担当:土井 勉(一般社団法人グローカル交流推進機構)

 先ずは下の図をご覧ください。

 この図は京都市右京区でまちづくり活動に取り組んでいる「LOVE LOCAL,LOVE UKYO!」のHPに掲載しているものです。大手のチェーンで買い物をすると、支払った金額の80%が地域外(主に首都圏)に流出するけれども、地元の商店で買い物をすると、地域外への流出は50%に抑えられるということが示されています。

 ここで示した数字は、京都大学の宮川愛由先生たちが発表された研究論文「消費者の買い物行動時の選択店舗の相違が地域経済に及ぼす影響に関する研究」に掲載されているものです。

 この研究は、まちづくりを考える場合に実に示唆に富むものになっています。私たちが日常生活での買い物をどこで行うのか、によって地域に戻るお金が異なることが定量的に示されているからです。大手スーパーなどだと20%、地元商店なら50%が地域に戻るお金になります。

 すなわち地元の商店で買い物をすると半分位は地元に残り、この残ったお金は地域の雇用の促進や、他のお店で使われることによってお金の循環が生まれます。

 地産地消と言われますが、地域で産み出された産品を使うだけでなく、どこで購入するのかも重要なことになります。

 さて、交通政策においてサポートする移動先として、買い物や通院などは重要な移動目的場所になります。また、どこの商店で買い物をするのかは、品揃えや価格、営業時間など様々な条件で選択されるかと思いますが、可能であれば、地域の商店なども行き先の選択肢に入るようにすることが望ましいと考えられます。

 そして、地域の商店も、お客さんが増えてくると品揃えなども向上していくことが想定され、循環の輪が大きくなっていきます。

 実際に、上記の「LOVE LOCAL,LOVE UKYO!」に取り組んで以降、地域の商店を重視する人々が増えてきたようで、この活動に賛同される商店も増加しています。

 交通政策に取り組む場合においても、お金の域外流出には注意をしておくことが、自立し定住を促進する地域を形成するために重要であることを心に留めていただければ幸いです。

 なお、こうした地域におけるお金の回し方が地域を発展させる原動力になることを、都市の魅力を分析した著作「アメリカ大都市の死と生」で有名なジェイン・ジェイコブズが、「発展する地域 衰退する地域-地域が自立するための経済学-」(ちくま学芸文庫)という図書で紹介しています。名著だと思いますので、こうした問題にご関心がある方は是非ご一読下さい。

 そうそう、ご多忙の方は、この本の最後に数ページですが「解説 ジェイコブズ経済学とその実践」と題して、元鳥取県知事の片山善博さんが書かれている論文があります。これだけでもお読み下さい。現実の県行政を担っていた方からのコメントなので、ここを読むだけでも目から鱗が落ちます。

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